• 2013.1.23

鋸山で、石切り職人をたどる ー中編

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※この記事はシリーズです。前編後編もお楽しみください。

ロープウェーを後にすると、そこはもう山歩きの様相を見せる自然の中へと入っていきます。鋸山を歩いてみたい方はお出かけ用の靴や服装ではなく、ハイキングかちょっとしたトレッキング用の靴などの装備をされることをお勧めします。これは決して大げさなことではなく、普段歩きなれない半ば山道では、足をくじいたり捻挫をしては自力では降りられないかもしれません。特に石切り場に向かう方は、それなりの装備をするほうが無難でしょう。

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途中、このように金谷石で造られた建物があります。蔦が絡んだその様子はなんだか良い感じですよね。この姿ひとつとっても金谷石はとても絵になります。

そういえばこの建物の手前に携帯か、地デジかわかりませんが新しいアンテナが建てられていて、おそらくその土台部分に使われていたのも鋸山の石だったような気がします。

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さあ、ここが『日本寺』の入り口です。鋸山はもともと霊山であり、ここから先はその領域に入るため、ここで拝観料を納めます。ここから先、『地獄のぞき』や『百尺観音』までは、混雑さえしていなければさほど遠い道のりではありません。ただし、足元にはお気をつけください。階段の連続です。また暑い日にはかなり水分が必要です。この入口から先は販売機などはありませんので補給しましょう。

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通り道に見える石切りの跡。よく見ると横に線状の模様があるのがわかりますね。先人たちはまずは手作業でこの石を切り出していきました。この道を通る時、ついつい歩くことだけに気を取られてしまいがちですが、この山域はあちこちで石切り職人とそれに関わった人たちの息遣いが聞こえてくるかのようです。

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この日は連休最後の日、しかもその前日まで荒天だったこともあり、この素晴らしい晴天がたくさんの観光客を引き寄せました。その結果ご覧のように大渋滞、長蛇の列! このような光景は初めて見ました。少々戸惑い(笑)。

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そしてやっと名所『地獄のぞき』に到着です!

人々が立っている足元はえぐれていて、下がありません! 皆さん、そんなに地獄を見たいのでしょうか(笑)。かく言うぼくはこの先端から一度も下を覗いたことはありません。なんだか、行きそびれてしまったんですよね。この日は長蛇の列で、この先の行程を続けるためにすぐにこの場所を後にしました。高所恐怖症ではありませんよ(笑)。

実はこの断崖、はじめから自然に存在したわけではありません。その証拠が次の写真。

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よーく見てください。何やら文字が刻まれています。しかも上にはフェンスがあってまさにその場所は地獄のぞきの側面、つまりフェンスの外に刻んであるわけです。この高さからだんだんと下へ下へと石を刻んでいったのですね。この文字は当時この辺りの石切りをしていた職人たちの証と言っても過言ではないでしょう。

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鋸山の標高330メートル。今や私たちの大多数は観光客のひとりとしてこの地を訪ねます。その眺めに感嘆し、爽やかさをおぼえ、満足して山を下りていくかもしれません。しかし、石切り職人たちは日々の暮らしを支えるためにこの山に登り、その手でひとつひとつ石を刻んでいたことでしょう。

始まった時に刻んだ石を運ぶための道は時が経つにつれ、道があったその場所さえも石が刻まれるようになり無数の道が消えては現れ現れては消えてを繰り返していたに違いありません。

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百尺観音』の手前から見た『地獄のぞき』。横方向に幾筋も見える線は石を切り進んだ跡です。先ほどの側面に刻まれた文字はちょうど人が立っているのが見える足元にありました。あの上から下までどれほどの量の石が刻まれたことでしょう。ある文献にあった写真などを見ると、命綱などはありませんでした。まさに命を賭けた仕事だったのでしょう。

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地獄のぞきの真下付近に彫られているのが『百尺観音』です。大きいですね。約30メートルのその高さには圧倒されます。このように奥に進んで彫られているのは、掘り進んでいくうちに質の良い層に当たるとその同じ層を奥へ奥へと求めていくためだそうです。金谷石にはいくつかの石の質に分けることができ、その中でも『桜目(さくらめ)』と言われる石質は上等だそうです。

この『百尺観音』の側面にもなにかが…。

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そう、この場所を切ったであろう職人の屋号のような““が刻まれていました。今回、石切り場を案内してくださった『金谷ストーンコミュニティー』の鈴木裕士氏のご説明がなければ、なにも知ることなくこの場所を後にしていたに違いありません。

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刻みかけの房州石。つるはしなどの道具で刻まれた跡が生々しいですね。縦方向に刻むのはなんとか理解できそうですが手前の石の下側にも刻んだ跡が見られます。どれだけの力や持久力や体力、精神力が必要だったのでしょうか。頭が下がるどころではありません。

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『百尺観音』はこの場所をずーっと見下ろしているのでしょうね。ここから見えるのは石切り職人からいつしか観光客になり、多くの人々が行き交うようになりました。時代の流れというのはいろいろなものを変えていきますね。

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この場所までは、たいてい誰でも行けるところです。実はこの『百尺観音』がある日本寺北料金所から先の道が、今回のハイライトになる場所。この先はちょっとした山の装備があったほうが無難です。スニーカーや街中の靴では心もとないと思います。

ぼくにとってこの先の道は未経験の地。写真でちらっと見たりしたものはありましたが、実際にはどうなっているのか、好奇心をかき立てられました。では石切り職人の道、最終章へ行ってみましょう。

 

[金谷ストーンコミュニティー]

 

(Ken)

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