富津の漁業を伝える穴場! 魅力にあふれる記念館
『富津埋立記念館』…この存在をご存知の富津市民はどれほどいらっしゃるんでしょうか。富津公民館の入口の門のすぐ脇から右に入って奥にあります。 富津の地に住んでだいぶ経ちますが、この建物に足を踏み入れたのは今年が初めて。2回ほど訪れましたが、2回とも楽しかった!
少し近づいてみると、この建物がかなり凝った造りをしていることがわかりますね。ちなみに入口のドーム状のデザインは、その昔、富津岬にあったという砲台がモチーフだそうです。
その内側には一体何があると思いますか? 玄関をくぐってみると…。
ハイッ! 『大漁旗』です! これら大漁旗がグルっと展示されています。
ちなみに大漁旗とは、『昔、大漁の時、大漁旗を揚げて船が浜へ帰ってくるのは、満載しきれなくなった魚類を他の船に転載してもらうための合図だった(yahoo!知恵袋)』と言われています。
この記念館、入場料は大人100円、小人50円です。安い。入り口で履物を履き替えて入館。いよいよ展示室へ入ります。
入り口はなんと自動ドアです。扉が開かれると緩やかなスロープが現れ、奥のほうから民謡のような男性の歌声が流れてきて、その不思議なアトラクション的な迫力と雰囲気に、一瞬、「ここは本当に富津の施設?」という疑問が頭に浮かびます。
感じの良い照明に照らされ、それゆえに思ってもみなかった期待感がふつふつと沸きます。
廊下づたいに富津近海にまつわるパネル展示がなされ、まるで都会にある博物館でも見るようにして一つ一つに見入ってしまいました。よくできている、という印象です。富津市を侮ってはいけませんね(汗)
富津といえば『海苔』。今でこそ機械化が進み、たくさんの海苔が収穫できて、作業も昔に比べたら人の手がかからなくなったように見えますが、昔は全て手作業。そんな昔の様子を偲ぶ展示がなされています。
中でもジオラマはほんとうによくできています。昔の海苔を乾燥させているシーンなどは、照明の加減といい、干している様子といい、今にも動き出しそうな雰囲気。
昔はこのようにして一枚一枚、手塩をかけて海苔を生産していたんですね。今では機械化で1日に1万5000ー2万枚の生産量と言われています。海苔漁の詳細は、以前の記事をご覧ください。
海苔の養殖に使う網を仕掛けるのに必要な竹に手を加えている様子のジオラマも躍動感があります。もう一人の男性は海苔網を手入れしているのでしょうか、編んでいるのでしょうか。まるで「父ちゃんとせがれ」のようにも見えます。すべてが手作業ですね。
腕っ節の太さが漁師さんらしいです。 砂地の上でむしろを敷いて作業している姿がなんとも時代を感じますね。懐かしい感じさえします。
昭和前期頃と思われる漁の様子のジオラマは、二艘の船で網を手繰り寄せ、漁をしている場面です。櫂(かい)で漕いでいるところが時代を感じさせます。この日は大漁だったのでしょうか(笑)。本当、今にも動き出しそう。
『富津潜り』と言われる漁法の実物大のジオラマもありました。水深5~20メートルの海底を潜水服に身を包み、海底の主に貝類を採取しています。
なかなかリアルなジオラマなのですが、なぜか『ちばコープ』の箱が模型に使われている…。少し悲しくなります(汗)。
この漁法は富津の対岸とも言える横浜から伝えられたらしいことが、『yokohama now』というサイトの『檀原照和のレッドライト(連載第2回)』に興味深く書かれています。
もともと富津では、素潜り漁は行われていたようですが、この『富津潜り』によって、漁師たちはこの富津の海だけではなく、『北海道、横須賀、愛知、三重、有明海へと、大勢で出稼ぎに向かい稼ぎまくった』と述べられています(『檀原照和のレッドライト』より)。
展示物のすぐ横には、テレビ画面を通して、この漁をしているところを映像で観ることができますが、潜水服を取り付けているところなどを見ても、それはそれは怖い感じです。当時は地元も大変潤ったようですが、この漁法、危険きわまりないとは言い過ぎではないでしょう。海の男たちには敬服します。魚介類、大事に食したいですね。
ここ『富津埋立記念館』に展示されているものは、この地で行われてきた漁師やその家族たちの様子、海苔の養殖事業の古今の仕事の違い、この富津がいかに海と関わって来たのかなど、決して侮れない、興味深いものばかりでした。一つ一つをじっくり観察していくなら1時間では足りないくらいの情報量があります。
この富津市に素晴らしい施設があることを、この記事を通してぜひ皆さんに知っていただきたいと思います。勉強会も開けそうな机と椅子を完備したお部屋や、畳の広い座敷などもあって、団体で訪れてもいい感じですよ。
開館時間は9:00~17:00、月曜日・祝祭日・年末年始はお休みのようです。ぜひ一度お出掛けください。富津公民館の真裏にあります!
[富津埋立記念館 〒293-0022 千葉県富津市新井字浜932-3 TEL. 0439-87-9740]
(Ken)