• 2012.11.19

知恵を出し合った、心温まる美しき竹燈籠の夕べ

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人間の集合というのはもともと小さなものでした。今でこそどこへ行っても人がいて、移動手段があって、北も南も、はたまた世界中、地球の裏側まで、人によっては宇宙まで行けるようになりました。それもいいかもしれません。

いや、それでいいんでしょうか…。

富津市は過疎の町です。人口減少に歯止めがかかりません。この40年余りの間にアクアラインも開通し、田舎道にそぐわないような大型の観光バスが通るようになりました。潮干狩り、観光施設、グルメなど、人々の興味をそそるものはたくさんあります。でも人口は増えません。人々は危惧しています。

「このままでは、人と人をつなぐ絆がなくなってしまう…」

そんな背景から、小さな部落の人々が知恵を出しあって取り掛かったイベント『含富里(がんぶり)竹燈篭の夕べ』。とにかくみんなで計画して一緒に過ごす機会を作ろうではないか、と考えた結果なのです。

『含富里(がんぶり)』とは、昔のこの地域の部落の名前で、現在では30数戸がここにあります。この部落には『光明寺』というお寺があり、鎌倉期に作られたとみられる『釈迦三尊像』があります。

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11月17、18日の二日間の行程でしたが、初日の土曜日は嵐のような天気が朝から深夜まで続き、結局、日曜日のみの開催となりました。

朝、開催地に行ってみますと、地元の皆さんが田んぼに出て、あぜ道や道路脇に竹灯篭を準備している様子が見えました。昨夜の大雨で足元が良くない中、入念な準備がされていました。

すべて斜めにカットされた竹が、手前の道路に向かうように設置されていて、その向きを合わせるのも大変な作業です。

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竹を切る経験ってありますか。ぼくは過去の仕事の経験からよく竹を切りましたが、普通の木材より跳ねるので結構キケンです。電動工具などで切ることもありますが、なかなか神経を使うものなんですよ。このようにきれいに切れるのは当たり前ではないんですね。

この竹の中にろうそくを入れ、砂で支えてありました。手作業でしかできない、手作業だからでき得る人のぬくもりが伝わる作業だと思いませんか。

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さあ、いよいよろうそくに火が灯されました。1000本ひとつひとつ、人の手によって灯された、貴重な、温かい明かりです。この部落の田んぼは平らではなくいくらか棚田のように一枚一枚が段差になっています。ですから一番手前から見ると光の列が一列一列重ならずに見えて、とてもきれいでした。

周りの明るさよりも、竹灯籠の明かりが勝るような暗さになる頃、人々が知らないうちに集まってきていました。お年寄りが比較的多く集まっておられ、みなさん、口々に『きれいだ』『いいねぇ』と言いながらのんびり歩いておられました。若い方ももちろん見に来ていて、思い思いに携帯やカメラで撮影していました。

若い人と年配の方の混合がなんだかぼくは嬉しかったです。

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この温もりのある灯火にどんな意味を付加するにしても、この明かりを純粋にきれいに感じたり、温かく思う気持ちって大事だと思うんですよね。この小さな部落の経験のある年配の皆さんが知恵を出しあってこのような催し物を計画されたことには、心からの敬意を払いたいと思います。ぜひ受け継がれていって欲しいですね。

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車の方に戻る途中、なにやら良い感じの話し声が。竹灯籠のほかはまさに闇、の状態ですが、敷物を敷いて楽しく会話しながら時間を過ごすご婦人の方々でした(笑)。なんだか花見が一つ増えたみたいな感じですね。『ここどうぞ!』って誘って下さったのですが、あまりにも急なことで、しりごみしてしまいました(笑)。今思えば『女子会』に誘われることなんてないですもんね! ご一緒すればよかったです、残念。来年また是非誘ってください!

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スローシャッターで捉えた竹燈籠は、温かな明かりが織りなす光の芸術。それを記録できるのは写真を撮る者として嬉しいですね。富津市内にこういう催しものがたくさん増えて、みんなが元気に暮らせる街になるといいですね。

 

含富里(がんぶり)絆の会 [via 千葉県]

 

(Ken)

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